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eスポーツ賞金1億5,000万円、税引き後はいくら残る?シャドバ世界大会で見る雑所得と一時所得、手取りの差は約4,210万円

1-1. 結論:1億5,000万円の手取りは、雑所得なら約7,098万円・一時所得なら約1億1,308万円

2021年12月19日、「Shadowverse World Grand Prix 2021」で優勝した19歳の大学生kakip選手(本名・柿沼秀真さん)は、1億5,000万円という、当時の日本のゲーム大会として最高額の優勝賞金を獲得した。この記事の要点を先に数字で示す。

  • 同じ1億5,000万円でも、大会主催者から直接受け取る賞金(雑所得)として整理した場合、源泉徴収・確定申告後の手取りは約7,098万円(手取り率約47.3%)になる
  • 一方、主催者とは別の第三者から褒賞金として受け取る場合(一時所得)として整理した場合、特別控除50万円と2分の1課税が効き、手取りは約1億1,308万円(手取り率約75.4%)になる
  • 両者の差は約4,210万円。これは一時所得ケースの手取り(約1億1,308万円)の約37%、賞金額(1億5,000万円)の約28%にあたる。同じ金額の賞金でも、「誰から」受け取るかという1点だけで、これだけの差が生まれる

この試算は、2026年分の所得税率表・国税庁の公表基準(後掲)を用いた簡略計算であり、実際の税額は必要経費や他の所得の有無で変わる。詳しい計算過程は6-1・6-2で示す。

もう1つ、この記事で確認しておきたい事実がある。kakip選手は優勝時点で19歳、当時の民法上の成年年齢(20歳)に照らすと法律上の未成年者だった(成年年齢を18歳へ引き下げる改正民法は2022年4月1日施行で、2021年12月時点ではまだ施行前)。高額賞金を未成年者が受け取った場合、所得税自体は年齢で区別されないが、親の扶養控除には明確な影響が出る。この点は7-1で、実例をもとに一般的な税法の整理を確認する。

1-2. この記事の読み方――「JeSUプロライセンス」だけが高額賞金の仕組みではない

「日本のeスポーツ大会は本来賞金10万円までしか出せないが、JeSUのプロライセンス制度があるから高額賞金が実現している」という説明を見かけることがある。これは半分正しく、半分不正確である。

JeSU(一般社団法人日本eスポーツ協会。2019年の照会当時の名称は「日本eスポーツ連合」)のプロライセンス制度は、たしかに高額賞金を適法にする仕組みの1つである。しかし、この記事のアンカーである「Shadowverse World Grand Prix 2021」を調べると、この大会自体はJeSUのプロライセンス制度を使っていないことが一次情報から確認できる。JeSU公式サイトが公表する公認タイトル一覧(2026年9月24日時点、14タイトル)にShadowverseは含まれておらず、同大会の公式Tournament Rulesにも、JeSUやプロライセンスへの言及は一度も出てこない。

種明かしをすると、高額賞金を適法にする仕組みは実は2種類ある。1つはJeSUのプロライセンス制度(3-1)、もう1つは資格制限を設けずに予選成績などで参加者を絞り込む方式(3-2)である。どちらも2019年にJeSUが消費者庁に照会し、景品表示法上の「景品類」にあたらないと整理された仕組みだが、Shadowverse World Grand Prixが使っているのは後者である。

この記事は、次の順番で進む。まず大会の一次情報(2章)と景品表示法の基本ルール(2-2)を確認し、続いて2つの型の違い(3章)を整理する。次に、賞金の規模が近い別の大会(PUBG MOBILE JAPAN LEAGUE、4章)と比較し、税金の分かれ目(5章)を確認したうえで、実際に1億5,000万円を2パターンで試算する(6章)。最後に未成年が受け取った場合の扶養への影響(7-1)と、確定申告が必要になる金額の目安(7-2)で締めくくる。

2-1. Shadowverse World Grand Prix 2021の一次情報――賞金総額・優勝賞金・出場条件

「Shadowverse World Grand Prix」(以下WGP)は、Cygames, Inc.が展開するデジタルカードゲーム「Shadowverse」の世界大会である。公式Tournament Rulesの冒頭には「The Shadowverse World Grand Prix 2021 shall be operated and managed by Cygames, Inc. and the Shadowverse World Grand Prix Management Office」とあり、主催・運営がCygames, Inc.であることが明記されている(2026-09-28確認)。WGP 2021公式サイトでも大会概要を確認できる。

2021年大会は、2020年大会が新型コロナウイルスの影響で中止になった経緯から2年分の出場権をまとめる形で実施され、予選(Day1・Day2、2021年11月13日・14日)を経て上位8名がグランドファイナル(2021年12月19日、さいたまスーパーアリーナ)へ進出した。

賞金の金額そのものは、公式Tournament Rules上には「別途定める賞金を、成績に応じて選手へ授与する」とだけ書かれており、具体的な金額の記載はない。金額は大会前後の告知で個別に発表される形で、優勝1億5,000万円・準優勝5,000万円・3位タイ(2名)各2,000万円・5位タイ(4名)各300万円、大会総額2億8,000万円という数字を、独立した複数の媒体が一致して報じている(2026-09-28確認、gamebiz・ENCOUNT「賞金総額2億8000万円『Shadowverse』世界大会の上位8選手が決定」・ENCOUNT「kakipが史上最高額の賞金1億5000万円を獲得」・マイナビニュース・@DIME)。gamebizの記事はCygamesの公式発表を受けた速報という体裁であり、複数の独立媒体が同じ内訳を伝えている以上、信頼できる数字として扱ってよいと判断した。ただし内訳の合計(8名分で約2億5,200万円)は総額2億8,000万円と完全には一致せず、予選敗退者への参加賞等の詳細までは一次情報で確認できていない点は留保しておく。

出場資格も公式規約で確認できる。参加者は事前に「RAGE Shadowverse」の各シーズン(2020年春〜2021年冬)や「Shadowverse World Grand Prix JCG Online Preliminary Tournament」、海外の地域予選(Shadowverse Korea Open等)で優秀な成績を収めたうえで、運営事務局から招待を受ける必要がある。つまり、誰でもエントリーできる大会ではなく、過去の実績に基づいて参加者があらかじめ絞り込まれている。この仕組みが、後述する景品表示法上の扱いと直結する(3-2)。

なお規約には「20歳未満の場合は保護者の同意書が必要」という条項もある(2021年当時の成年年齢20歳を基準にした記載)。この点は7-1で扱う。

2-2. なぜ日本のゲーム大会は賞金10万円が上限になりうるのか――景品表示法の仕組み

1億5,000万円という金額の異例さを理解するには、まず「何もしなければ賞金は原則10万円までしか出せない」という日本特有の制約を知る必要がある。

不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)は、事業者が消費者に対して行う「懸賞」による景品類の提供額に上限を設けている。消費者庁「一般懸賞について」によると、懸賞に係る取引価額が5,000円未満なら取引価額の20倍まで、5,000円以上なら一律10万円までが景品類の最高額であり、根拠は「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」(昭和52年公正取引委員会告示第3号)である(2026-09-28確認、消費者庁「一般懸賞について」)。ゲーム会社が主催するゲーム大会で、有料パッケージや課金要素のあるタイトルを使う場合、大会の賞金がこの「懸賞による景品類」に該当すると解釈されれば、賞金は10万円までに制限されてしまう可能性がある。これが、日本のeスポーツで長らく議論されてきた「高額賞金問題」である(JeSU公式サイト等)。

ただし、この制限には抜け道ではなく、明確な例外がある。景品類の指定の告示の運用基準(昭和52年公正取引委員会事務局長通達第7号)は、「仕事の報酬等と認められる金品の提供」は景品類の提供にあたらないと定めている。つまり、大会の賞金が「参加者が行った仕事(=優れたプレイを披露し、観客・視聴者を魅了すること)に対する報酬」だと整理できれば、10万円の上限は適用されない。

問題は、どうすれば「仕事の報酬」だと認められるかである。この論点についてJeSUが2019年8月5日に消費者庁へ照会し、2つの具体的な大会形式が景品類の提供にあたらないという整理を得た。次章でその2つの形式を確認する。

なお、「賞金は10万円まで」という理解自体、実はやや誇張された俗説でもある。この解釈が広まった発端は、あるゲーム会社が自社主催の大会規約に「10万円を上限とする」という主旨をあらかじめ書き込んだことにあるとされ、それが独り歩きして「法律上の上限」であるかのように扱われるようになった経緯がある(2026-09-28確認、eSports World「日本のeスポーツと『高額賞金問題』の法的課題」)。実際には、2016年の「モンストグランプリ」(優勝賞金2,000万円)や2017年の「GALLERIA GAMEMASTER CUP」(500万円)のように、2019年のノーアクションレターより前から高額賞金の大会は存在しており、少なくとも確認できる範囲では消費者庁から問題視された記録は見当たらない。JeSUの照会は、こうした運用のばらつきに明確な法的根拠を与えるために行われたものといえる。

3-1. 高額賞金を可能にする型その1――JeSUプロライセンス制度

JeSU(一般社団法人日本eスポーツ協会。2026-09-28時点の公式サイトの表記による。2019年の照会当時は「日本eスポーツ連合」を名乗っていた)は、ゲームタイトルの権利者(IPホルダー)からの申請を受けて「JeSU公認タイトル」を認定し、公認大会において「ジャパン・eスポーツ・プロライセンス」等を発行する制度を運営している。公認条件は4つで、(1)ゲーム内容に競技性が含まれること、(2)3か月以上の運営・販売実績があること、(3)今後も大会を運営する予定があること、(4)大会としての興行性が認められること、である(JeSU公式サイト「JeSU公認タイトル規約」、2026-09-28確認)。

2019年8月5日付でJeSUが消費者庁へ提出した照会書によると、この型の理屈は次のとおりである。ライセンス選手は「大会規約に基づき好成績を収め、競技性・興行性ある大会等へ出場するプロフェッショナルであるという自覚を持つ」と誓約した者として選考されており、大会において高い技術を用いたゲームプレイを観客・視聴者に見せることが「仕事の内容」として期待されている。したがって、その成績に応じて支払われる賞金は「仕事の報酬等」にあたり、景品表示法上の景品類の提供には該当しない、という整理である。

JeSU公式サイトの公認タイトル一覧(2026年9月24日時点)には14タイトルが並ぶ。「ストリートファイター6」「鉄拳8」「eFootball™」「グランブルーファンタジー ヴァーサス」「グランブルーファンタジー ヴァーサス -ライジング-」「パズドラ」「モンスターストライク」などで、対戦格闘ゲームやスポーツゲームが中心である。なお、ライセンス取得の年齢制限は2026年2月16日に撤廃されており、それ以前は「15歳以上かつ義務教育課程修了者」が条件だった。

JeSUが発行するライセンスは、かつて1種類ではなかった。2019年の照会書に添付された「JeSU公認プロライセンス規約」によれば、当時は公認タイトルにおいてプロライセンスのほかに「ジャパン・eスポーツ・ジュニアライセンス」「ジャパン・eスポーツ・チームライセンス」も発行できる仕組みになっていた。ジュニアライセンスの存在は、eスポーツの高額賞金を巡る制度設計が、未成年者を当初から想定していたことを示している。ただし、JeSU公式サイトによると、このジュニアライセンスは2026年2月16日の年齢制限撤廃と同時に廃止されている(2026-09-28確認)。いずれにせよ、これはJeSU公認タイトルにおける枠組みであり、公認タイトルではないShadowverseの大会には直接は適用されない。

しかし、この一覧にShadowverseは含まれていない。 同じCygamesのタイトルである「グランブルーファンタジー ヴァーサス」がJeSU公認である一方、Shadowverseは公認タイトルではない。つまり、WGPの高額賞金はこの型では説明できない。

3-2. 高額賞金を可能にする型その2――参加者限定方式、シャドバWGPが実際に使う仕組み

2019年8月5日のJeSU照会書には、もう1つの型が示されている。原文の表現を借りると「賞金の提供先に資格制限を設けないが、一定の方法で参加者を限定した上で大会等の成績に応じて賞金を提供するケース」である。具体的には、大会の参加者を「予選の順位、過去の大会における実績又は当該ゲームにおける一定の能力や経験等、所定の審査基準」に基づいて限定し、その結果に応じて上位入賞者へ賞金を提供する形式を指す(2026-09-28確認、消費者庁公表資料)。

JeSUプロライセンスのような資格発行の手続きを経ていなくても、この整理は成り立つ。理由は型1(3-1)と同じで、所定の基準で選抜された参加者は「高い技術を用いたゲームプレイの実技若しくは実演又はそれに類する魅力のあるパフォーマンスを行い、多数の観客や視聴者に対してそれを見せる」ことが仕事の内容として期待されており、その成績に応じた賞金は「仕事の報酬等」として景品表示法上の景品類にあたらない、という考え方である。

Shadowverse World Grand Prix 2021の出場資格を思い出してほしい(2-1)。参加者は「RAGE Shadowverse」各シーズンや地域予選での優秀な成績を条件に招待される仕組みで、参加資格そのものに「JeSUライセンスを持っていること」という条件は一切ない。これはまさに、上記の「参加者を限定した上で成績に応じて賞金を提供するケース」に該当する。

つまり、Shadowverse World Grand Prixの高額賞金は、JeSUのプロライセンス制度ではなく、同じ2019年のノーアクションレターが示したもう一つの型によって適法化されている。実際、CyberZは2018年に「RAGE Shadowverse Pro League」という独自のプロリーグを立ち上げ、参加選手に月額30万円の最低収入保証を設けていた(2026-09-28確認、CyberZ公式プレスリリース「国内最大級のeスポーツ大会RAGEが初となるプロリーグ『RAGE Shadowverse Pro League』を始動」)。これはShadowverse World Grand Prixとは別の枠組みだが、Shadowverse関連のeスポーツ興行が、JeSUとは別の複数の手段で選手への支払いの仕組みを組み立ててきた経緯を示す一例である。「日本の高額賞金eスポーツ=JeSUプロライセンス」という一括りの説明では、この大会の実態を正確に説明できない。

4-1. 他の大会と横並びで見る――PUBG MOBILE JAPAN LEAGUEの賞金規模と仕組みの違い

WGPが横並びで使えるかを確認するため、日本国内の別ジャンルの高額賞金大会も見ておく。「PUBG MOBILE JAPAN LEAGUE」(以下PMJL)は、スマートフォン向けバトルロイヤルゲーム「PUBG MOBILE」の日本国内プロリーグである。SEASON 1(2021年)は、賞金総額3億円、優勝したチーム「REJECT」が1億円、準優勝チームが2,500万円を獲得し、参加選手には最低年俸350万円の保証も設けられていた(2026-09-28確認、fpsjp.net・Negitaku.org esports)。総額でWGP(2億8,000万円)に匹敵する規模だが、直近のSEASON6(2026年)は総額1,000万円(Phase1・Phase2で各500万円)まで縮小しており、賞金総額はシーズンごとに大きく変動する(2026-09-28確認)。

項目 Shadowverse World Grand Prix 2021 PUBG MOBILE JAPAN LEAGUE SEASON1(2021)
賞金総額 2億8,000万円 3億円
最高賞金 1億5,000万円(個人) 1億円(チーム)
出場単位 個人(予選成績で招待) チーム(16チーム)
賞金の受取先 選手個人 チーム(法人・団体)
別途の収入保証 規約上の明記なし 選手に最低年俸350万円保証

表のとおり、WGPは個人が招待選手として出場し、賞金は主催者であるCygamesから選手個人へ直接支払われるのに対し、PMJLはチーム単位で出場し、賞金もまずチームへ支払われる。この構造の違いが、次節で見る税務上の扱いの違いにつながる。

4-2. チーム経由の賞金は税務上どう扱われるか――雇用契約か業務委託契約かという論点

PMJLのようなチーム制リーグでは、選手個人が最終的に受け取る金銭の所得区分は、大会の賞金規定だけでは決まらない。チームと選手の間の契約が「雇用契約」なのか「業務委託契約」なのかという、もう1段階別の論点が挟まるためである。一般論として、雇用契約であれば選手が受け取る年俸・賞金分配は給与所得、業務委託契約であれば事業所得または雑所得になりうる。

この論点は、実は専門家の間でも一律に決着していない。税理士・FPの立場からPMJLの規約を検討したコラムでも、「各チームと選手間の契約が『雇用契約』となるのか、『業務委託契約』となるのかは、選手にとって所得税の所得区分や社会保険の加入判断にも影響してくる部分」であり、公表される規約の詳細を個別に確認する必要があると述べるにとどまっている(2026-09-28確認、note.com「PUBG MOBILE JAPAN LEAGUE(PMJL)リーグ概要の注意点と疑問点」)。この記事でも、どちらが正解かを断定はしない。

重要なのは、賞金総額や優勝賞金の大きさだけを見て「同じ話」として扱ってはいけないという点である。個人が主催者から直接賞金を受け取るWGP型は、この記事の核心である「雑所得か一時所得か」という分岐(5章)にそのまま乗る。一方チーム経由のPMJL型は、まず「給与所得か事業所得か」という別の入り口を通過したうえで検討する必要があり、税務上の性質が異なる。この記事では、以降1人の個人が主催者から直接、大きな金額を一括で受け取るというWGPのケースに絞って試算する(6章)。

5-1. 一時所得と雑所得はどう決まるか――「誰が払うか」で分かれる

国税庁は一時所得を「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得」と定義している。具体例として、懸賞や福引きの賞金品、競馬・競輪の払戻金、生命保険の満期返戻金などが挙げられている(2026-09-28確認、国税庁No.1490)。ポイントは「労務や役務の対価としての性質を有しない」という部分である。

一方、雑所得は給与所得・事業所得など9種類の所得のどれにも当てはまらない所得の受け皿で、特別控除や2分の1課税のような優遇措置はない。

この2つを分ける実務上のポイントは、その賞金が「労務・役務の対価」といえるかどうかであり、これは多くの場合「誰が、何のために支払うか」で決まる。ここで手がかりになるのが、3章で確認したJeSU照会書の文言である。ライセンス選手・参加者限定方式のいずれについても、照会書は「大会等に参加する選手は、各試合を自らの業務として実施し、その報酬として当該賞金をゲーム会社等から受領する」と説明している。つまり、大会を主催するゲーム会社自身が、その大会での成績に応じて直接支払う賞金は、「業務の報酬」という性格を帯びやすい。この整理に従えば、雑所得(プレイが事業として継続的・専業的であれば事業所得)に区分される可能性が高い。

この分かれ目を直接裏づける公表事例が、国税庁の質疑応答事例「マラソン大会の賞金・褒賞金の課税関係」である。ある選手が、①マラソン大会を主催するB財団から1位入賞賞金・記録更新賞金を受け取り、②主催者とは別の後援団体(C社団)からも記録更新を理由とする褒賞金を受け取ったケースについて、国税庁の回答は次のとおり整理している(2026-09-28確認)。

  • ①主催者(B財団)からの入賞賞金・記録更新賞金=雑所得。「B財団が主催するマラソン大会で入賞等をしたことに伴いB財団から支払われるものであることを踏まえると、B財団に対する役務の対価又はその役務に付随して取得するものと認められる」ため
  • ②主催者以外の団体(C社団)からの褒賞金=一時所得。「C社団に対する役務の対価として支払われたものとは言えず、また、継続して支給されるものでもない」ため

この整理をWGPに当てはめると、賞金はCygames, Inc.という主催者自身から選手へ直接支払われる(2-1)ため、①のパターンに近く、雑所得に区分される可能性が高いと考えられる(プレイが事業として継続的・専業的であれば事業所得)。一方、もし主催者とは別の団体が独自に褒賞金を出す場合は②のパターンに近く、一時所得になりうる。次節では、実際に賞金が支払われる時点の源泉徴収の仕組みを確認する。

5-2. 賞金を受け取った瞬間に何%が天引きされるか――源泉徴収の実務

WGPの公式Tournament Rulesには、賞金の支払いについて明確な一文がある。「The prize money shall be paid in Japanese yen after deducting the withholding tax and other taxes stipulated by Japan.」(賞金は、日本の法令が定める源泉徴収税その他の税額を控除したうえで、日本円で支払われる)——つまり、賞金は満額そのまま振り込まれるのではなく、あらかじめ源泉徴収された残額が振り込まれることが規約上明記されている(2026-09-28確認、Cygames, Inc.発行「Shadowverse World Grand Prix 2021 Tournament Rules」)。

このタイプの賞金は、国税庁が定める「広告宣伝のために支払う賞金等」の源泉徴収ルールに該当すると考えられる。事業を営む個人や法人が、自社の製品・事業内容の宣伝を目的として支払う賞金(クイズ番組の賞金等も含む)が対象で、税額の計算式は「(賞金等の額-50万円)×10.21%」である。賞金の額が50万円以下なら源泉徴収は不要になる(2026-09-28確認、国税庁No.2813)。

これを1億5,000万円に当てはめると、源泉徴収額は次のようになる。

(150,000,000円 - 500,000円) × 10.21% = 15,263,950円

つまり、優勝賞金1億5,000万円のうち、受け取り時点で約1,526万円が天引きされ、実際に口座へ振り込まれるのは約1億3,474万円になる計算である。ただしこれは最終的な納税額ではない。源泉徴収はあくまで「前払い」であり、実際の税額は確定申告で改めて計算し、源泉徴収された分を差し引いた過不足を精算する。規約にも「源泉徴収税の納税証明書の提出を求められる場合がある」という条項があり、確定申告での精算を前提とした設計になっている。次章で、この確定申告後の最終的な手取りを試算する。

6-1. 試算1:主催者から直接受け取るケース(雑所得)で確定申告後の手取りを計算する

5-1で確認したとおり、WGPの賞金は主催者であるCygamesから選手へ直接支払われるため、雑所得として整理した場合の試算をする。必要経費はここでは考慮しない(公式Tournament Rulesの不可抗力条項には「不可抗力の場合を除き、賞金・交通費・その他の支援を行う」という趣旨の記載があり、通常時は交通費等の一部が主催者側から支援される前提になっていると読める。選手個人が負担する経費はごく小さいと考えられるため、ここでは簡略化して0円とする)。2026年分の税率表(国税庁No.2260、2026-09-28確認)と住民税率10%(所得割の標準税率)を用い、他の所得はないものとする。1億5,000万円という所得水準では基礎控除は0円になる(合計所得金額2,500万円超で基礎控除が消える現行の仕組みによる)。

項目 金額
賞金額 150,000,000円
受取時の源泉徴収(5-2) △15,263,950円
受取直後の手取り 134,736,050円
雑所得の金額(課税所得) 150,000,000円
所得税額(150,000,000×45%-4,796,000) 62,704,000円
復興特別所得税を含む所得税等(×1.021) 64,020,784円
住民税(150,000,000×10%) 15,000,000円
税負担合計(所得税等+住民税) 79,020,784円
最終的な手取り(賞金-税負担合計) 70,979,216円

確定申告では、源泉徴収された約1,526万円を所得税等の額から差し引いた約4,876万円を追加で納付し、これとは別に住民税約1,500万円を翌年度に納付する流れになる。最終的な手取りは約7,098万円、手取り率は約47.3%まで下がる。1億5,000万円という金額の大きさゆえに、税率は最高区分の45%(+復興特別所得税・住民税)がそのまま適用される点が効いている。

実務上の注意点として、この賞金を理由に翌年の「予定納税」(前年の税額の一部を7月・11月に前払いする制度)が発生するわけではない点は押さえておきたい。予定納税の基準額は、山林所得・譲渡所得・一時所得・雑所得・臨時所得等を除いて計算する仕組みになっており(2026-09-28確認、国税庁No.2040)、この賞金(雑所得)単発の所得だけを理由に予定納税が課されることは原則ない。とはいえ資金繰りとしては、確定申告時に約4,876万円を追加納付するのに加え、住民税約1,500万円は翌年6月以降の納付書(原則4期分割)で別途請求される。さらに7-1で触れる国民健康保険料も別途発生しうるため、これらを合わせて見込んでおく必要がある。

この数字を、次節の一時所得ケースと比較する。

6-2. 試算2:第三者からの褒賞金として受け取るケース(一時所得)で確定申告後の手取りを計算する

比較のため、同じ1億5,000万円を、大会主催者でも選手個人と契約関係にある企業でもない団体(後援団体・所属先の自治体等、5-1のマラソン大会の例でいう「C社団」に相当する立場)から褒賞金として受け取った場合を試算する。なお、選手と業務委託・スポンサー契約を結んでいる企業からの支払いは、その契約に基づく役務の対価とみなされ雑所得・事業所得になりうる点には注意したい。一時所得の金額は「総収入金額-経費-特別控除額(最高50万円)」で計算し、その2分の1を他の所得と合算して総所得金額とする(国税庁No.1490)。このケースは大会の賞金そのものではなく、大会の成績を理由に独立した第三者が支払う一時金という想定のため、5-2の「広告宣伝のための賞金等」の源泉徴収(賞金そのものへの天引き)はここでは想定せず、確定申告で一括して納税するものとする。

項目 金額
褒賞金の額 150,000,000円
一時所得の金額(150,000,000-特別控除500,000) 149,500,000円
総所得金額に算入する額(×1/2) 74,750,000円
所得税額(74,750,000×45%-4,796,000) 28,841,500円
復興特別所得税を含む所得税等(28,841,500円+復興特別所得税605,671円〈2.1%、1円未満切り捨て〉) 29,447,171円
住民税(74,750,000×10%) 7,475,000円
税負担合計(所得税等+住民税) 36,922,171円
最終的な手取り(褒賞金-税負担合計) 113,077,829円

手取りは約1億1,308万円、手取り率は約75.4%になる。特別控除50万円はわずかな効果だが、総所得金額に算入する額が2分の1になる効果は大きい。雑所得ケース(6-1)の最終手取り約7,098万円と比べると、その差は次の式のとおりである。

113,077,829円 - 70,979,216円 = 42,098,613円(約4,210万円)

同じ1億5,000万円の賞金でも、支払う主体が「大会主催者自身」か「第三者」かという1点の違いだけで、手取りに約4,210万円もの差が生まれる。これが、この記事の冒頭(1-1)で先出しした結論の根拠である。

改めて整理すると、実際のWGPの賞金はCygamesという主催者自身から直接支払われているため(2-1)、税法の一般的な整理に当てはめると6-1の雑所得ケースに近い性格を持つと考えられる。一方この節の一時所得ケースは、「もし同じ規模の金額を、大会運営とは無関係な第三者から褒賞金として受け取っていたら」という比較のための試算である。同じ「1億5,000万円のeスポーツ賞金」というニュースを見ても、支払いの構造次第で税負担がここまで変わりうることを示すのがこの2つの試算の狙いであり、いずれも簡略化した数字である点は変わらない。実際の税額は経費・他の所得の有無で変動するため、具体的な金額を受け取った場合は税理士や税務署へ確認することをすすめる。

7-1. 未成年が受け取ったらどうなるか――実例で見る扶養控除と住民税非課税基準への影響

1-1で触れたとおり、WGP 2021の優勝者kakip選手は、大会当日(2021年12月19日)時点で19歳の大学生だった(2026-09-28確認、@DIME・マイナビニュースの報道より)。当時の民法における成年年齢は20歳であり、成年年齢を18歳へ引き下げる改正民法の施行は2022年4月1日だった。したがって優勝時点のkakip選手は、法律上の未成年者だった。WGPの公式規約にも「20歳未満の参加者は保護者の同意書が必要」という条項があり、この年齢基準とも整合する。

ここで2点、注意を先に述べておく。第一に、成年年齢はすでに18歳に引き下げられているため、今の18歳・19歳の読者は法律上すでに成人であり、2021年当時のkakip選手と同じ立場にはならない。以下の親の扶養控除の基準は、「未成年か成年か」ではなく、扶養親族本人の所得金額で決まる(年齢区分が関わるのは「特定扶養親族」等の控除額の違いに限られる)。一方、本人の住民税の非課税措置は「未成年者」を対象にした基準である。つまり以下は、賞金を得た本人の所得金額次第で誰にでも起こりうる一般ルールであり、kakip選手の実例は「当時、法律上の未成年者が実際にこの規模の賞金を受け取った」事実を示す具体例として扱う。第二に、kakip選手自身が実際にどの所得区分でどう確定申告したかは非公開情報であり本記事では確認できない。以下は、この金額規模の賞金を未成年者が受け取った場合に一般的に適用される税法上の整理である。

まず所得税に年齢による区別はない。何歳であっても、所得金額に応じて同じ税率表が適用される。したがって6章の試算は、受け取ったのが未成年者であっても金額は変わらない。

影響が出るのは、親(扶養者)側の扶養控除である。2026年分の税制では、扶養親族として認められるための所得要件は「合計所得金額62万円以下」である(令和8年度税制改正で58万円から引き上げ。2026年12月1日施行、2026年分から適用。国税庁No.1180)。19歳以上23歳未満に限っては「特定親族特別控除」という段階的な控除の枠があるが、それでも合計所得金額が123万円(給与収入のみの場合は197万円)を超えると控除はなくなる(国税庁No.1177、既存記事「子のバイト収入が見込みより増えたら親の年末調整はどう直す?」参照)。1億5,000万円という金額は、雑所得・一時所得のどちらの整理でも、これらの要件を桁違いに超える。したがって、この規模の賞金を得た未成年者は、その年分について親の扶養から確実に外れる。

もう1つ、未成年者本人の住民税にも基準がある。18歳未満・未婚の未成年者は、前年の合計所得金額が135万円以下(2025年の給与収入のみなら204万4千円未満)であれば住民税が非課税になる措置がある。しかしこの基準も、1億5,000万円という金額の前では意味を持たない。高額賞金を得た未成年者は、この非課税措置の対象外として通常どおり住民税が課税される。

さらに見落としやすいのが、健康保険の被扶養者資格である。親の会社の健康保険に「被扶養者」として入っている場合、その認定基準は年間収入130万円未満(2025年10月以降、19歳以上23歳未満は150万円未満)である(2026-09-28確認、日本年金機構「19歳以上23歳未満の方の被扶養者認定における年間収入要件が変わります」)。1億5,000万円の賞金はこの基準もはるかに超えるため、扶養から外れて自分自身で国民健康保険等に加入することになる可能性が高い。ただし、一時的な収入を年間収入に含めない健康保険組合もあるので、加入先の健保組合・協会けんぽに確認したい。国民健康保険料には「賦課限度額」(年間の上限額)が定められているため青天井にはならないが、令和8年度の法定の上限は40歳未満で合計96万円(医療分67万円・後期高齢者支援金分26万円・子ども・子育て支援金分3万円。国民健康保険法施行令第29条の7。上限は年度ごとに改定され、自治体が低く定める場合もある)で、1億5,000万円の所得があれば翌年度の保険料はこの上限に達するとみてよい。6-1・6-2の税額試算には含まれていない別枠の負担として意識しておきたい。扶養を外れた場合の社会保険料の負担感は、このブログの「特定口座は源泉徴収ありでも、損益通算の確定申告でいくら得する?」でも別の切り口から試算しているので、あわせて確認してほしい。

7-2. 小さい賞金ならどうなるか――確定申告が必要になる金額の目安と、確認の仕方・関連記事

ここまでは1億5,000万円という極端な金額で試算したが、実際に大会に出場して数万円〜数十万円の賞金を得るケースの方が多いはずである。この記事の結論(5-1)どおり、大会主催者から直接受け取る賞金は雑所得に区分される可能性が高いため、小額の場合もまず雑所得の基準で考える必要がある(国税庁 質疑応答事例「マラソン大会の賞金」)。

ケース 確定申告が必要になる目安
会社員・アルバイトなど給与所得がある人が、主催者から直接雑所得として賞金を受け取った場合 経費を差し引いた賞金の額が年間20万円を超えたら申告が必要(特別控除は無い)
給与所得がない学生・無職の人が、主催者から直接雑所得として賞金を受け取った場合 賞金の額が、その年の基礎控除額(2026年分は合計所得489万円以下なら104万円、国税庁No.1199)を超えたら申告が必要になりうる
大会主催者とは別の団体から一時所得として褒賞金を受け取った場合 特別控除50万円があるため、褒賞金の合計が50万円以下なら課税対象がゼロになり申告の必要は生じにくい。50万円を超え、90万円を超えたあたりから(特別控除後の2分の1が20万円を上回るため)給与所得者の申告ラインにかかってくる(国税庁No.1490 Q&A)

つまり、主催者から直接受け取る一般的な大会賞金は、一時所得の「50万円の特別控除」をそのまま当てはめて「50万円以下だから申告不要」と考えるのは誤りである。雑所得なら経費を除いた額が20万円(無収入なら基礎控除額)を超えた時点で申告が必要になる。なお、所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税には給与所得者の20万円以下申告不要ルールが適用されないため、市区町村への住民税の申告が別途必要になる点にも注意したい。

見分け方の目安としては、大会側からあらかじめ出場条件・成績に応じた賞金が用意されている(=WGPのように招待選手として出場する)大会は雑所得・事業所得型、オープン参加の小規模な大会で単発的に入賞した場合や、主催者以外の団体から独自に贈られる褒賞金は一時所得型になりやすい。

実際に大会の賞金を受け取ったときは、(1)大会規約に源泉徴収の記載があるか、(2)受け取った金額と源泉徴収前の総額が一致しているか、(3)支払調書や源泉徴収に関する証明書が発行されるか、を確認するとよい。金額が大きい場合や、雑所得か一時所得かの判断に迷う場合は、税理士への相談を検討したい。

このブログでは、税金や手取りの具体的な試算を他のテーマでも扱っている。扶養控除の考え方は「子のバイト収入が見込みより増えたら親の年末調整はどう直す?2026年の特定親族特別控除」、一時所得の特別控除50万円と2分の1課税の考え方は「宝くじ45.7%・toto50%・競馬は最大80%、1万円分買ったら実際いくら戻る?総務省データで公営ギャンブルを横断比較」、贈与と所得の違いは「親から100万円振り込まれたら贈与税?生活費・教育費との違い」で詳しく試算している。合わせて確認してほしい。